なぜ「一駅歩く」は続かないの?運動不足解消したいなら「脳のクセ」をハックする
- Svaha Yoga

- 4月4日
- 読了時間: 7分
適度な運動と睡眠、節度のある食事などが健康に必要なことを私たちは知っています。新しい年度に変わり、運動習慣を身に付けたいという方も多いのではないでしょうか。
せっかく運動習慣をつけるなら、効果が上がる運動量を知っておきたいですよね。WHOや厚生労働省の推奨する運動量を整理すると、成人の場合「中強度の身体活動を週150分以上」または「高強度の身体活動を週75分以上」行い、追加で「筋力トレーニングを週2日以上」が、国際的な共通ガイドラインの目安です。

中強度の運動というのは、「ちょっとしんどいな」と思いつつ、話しながら行える程度のウォーキングやバイクエクササイズくらいの強度。話せるけど歌うのは無理、くらいの感じですね。ヨガも割とこの範疇に入ることが多いです。
週150分の運動量、ヨガでもカバーできますか

でも週150分以上となると、30分のウォーキングやジョギングなら週に5回、60分のヨガクラスを週に2回受けても間に合いません。忙しい私たちには実現不可能だと感じる方も多いかもしれません。
運動量は中強度と高強度の組み合わせでも構いません。換算するときは「高強度」は「中強度」の2倍の効果があるとみなされます。だから30分がっつりランニングしたら残りは80分程度の中強度でも構わないんですね。
運動は小分けにしても行っても構わないので、これなら毎日10-15分の早歩きをすれば十分クリアしますね。
しかし、忘れてはいけないのが筋力トレーニング。脚(下肢)、腰(股関節周り)、背中、胸、腹、肩、腕の7つのエリアを週2回以上、バランスよく刺激することが求められます。
SVAHA YOGAで行う「ハタヨガ」クラスは、呼吸法からスタートして立位のポーズをメインにしつつ、後半は座位中心のクールダウン、ストレッチ要素を入れた中強度運動と筋トレの要素がちょうど良く入ってる内容です。
リラックス系になると下半身への刺激は少し控えめになりますが、立位は必ず少し入れています。理由はこのガイドラインを意識して…ではなくて、すわってばかりで1時間やる方が疲れちゃううからなんですけどね。
だから、ポーズを行う時に、膝の向きとか骨盤の角度みたいな細かい指示(面倒だなと感じる日もあるかもしれませんが)が入ったら、しっかりやると筋トレをわざわざやらなくても済むというメリット(笑)があります。
筋トレもフォームが非常に重要なので、まあいずれどこかでやらないといけないのがフォーム修正。運動で一番不快に思うのがこれだという人も少ないはずです。
日常動作を運動に変えるのが思ったより難しい理由

時間をとって行う運動が嫌い・忙しくて無理、という人は日常動作の運動ももちろん加算できます。WHOは、運動推奨量に足りなくてもやった方がいいよと明言しています
Some physical activity is better than none.
(少しでもやる方が全くやらないよりも良い)
心強いメッセージです。とはいえ、地下鉄のホームからの長~い階段を登るのは億劫だし、腰や膝が痛くなる場合もありますよね。あとよく言われる「一駅先から歩く」意外とやらなくないですか?
都心なら一駅も近いけど郊外に近づくと駅の距離が遠くなったり、途中に暗くて夜は1人で歩くのが憚られるような道がある場合もあるし、仕事帰りのバッグが肩に食い込んでる状況でそんな選択ができる人は限られているでしょう。日常動作のエクササイズ化を阻む要素はたっぷりあります。
やらない理由が山積みでもパッっと動く判断ができるとしたら、やる気がめちゃくちゃあるか、身体が動ける仕様になっているか、どちらかなのです。
そもそも私たちはどうして運動したくないのか

人類の歴史は飢餓との戦いでした。私たちの脳も体も、省エネで行動の結果が出るように進化しています。だからどれほど運動した方が健康に良いとわかっていても、出来ないのには筋が通った理由があるのです。
①運動の効果はすぐには出ないから
運動の効果として減量や健康診断の数値への反映を求めるなら、これは中長期戦です。しかし人間の脳は、快不快に反応しやすい傾向があります。
将来の利益(長期的な健康)より今のコストを(楽ちん!)に重みをつけて見積もってしまうこの脳のクセには「時間割引」と名前がついているほどなのです。
②動き始めることが億劫だから
ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』によれば、「運動した方がよい」という判断は、システム2です。
システムというのは、この著書でカーネマンが提示した認知モデルのこと。直感的、無意識、自動的、感情的な判断をシステム1、論理的、意識的、努力が必要、慎重な判断をシステム2と呼びました。
システム1は、飛んできたボールを避けるような時には必要ですが、証拠不十分なそれっぽい情報に惑わされてしまいやすいという弱点があります。
システム2は、複雑な問題にも対応できますが、エネルギー消費が激しく、腰が重いのが難点です。3月15日の確定申告の手続き、大体の人がギリギリにやってますよね? こういういことです。
運動をする、というのは基本的にはシステム2です。そもそも面倒なのです。
③動くのが「不快」というイメージが体に染み込んでいるから
いやいややったけどストレッチをしたら気持ちよかったといった経験を持つ人も多いはずですが、次にやろうと思ってもできない場合は、動くことによる「不快」いうイメージが、1~2回の「快」情報よりも強いからです。
だから、いつもより10分歩くのが大変なのはシステム2を呼び起こして、かつ本当に体を動かす必要があるとい二重のめんどくささがあります。
歩くこと自体が快適でない人、長く座っているとどこかが痛くなる人、立っているだけで疲れるという状態では、そもそも「運動しよう」というシステム2が起動する前に、体が拒否反応を示してしまいます。
ヨガは運動習慣の入口の最適解のひとつ
しかし、テクノロジーが発達した今も私たちが新しい選択をしやすい身体条件を新しくインストールするためには、繰り返し実際身体を動かすしかないというのが正直なところです。映画『マトリックス』のように頸のドックからシステムをダウンロードするのはまだ無理なんですよねえ。
ヨガは、呼吸と注意を使いながら身体の使い方を学ぶ方法です。カーネマン風に言えば、システム2の連続です。簡単そうに見えるポーズがやってみたら大変なのは、フォームを整える筋トレ要素があるから。柔軟性と筋力を両輪で扱うので、結果としては少しずつその両方が育っていきます。
これが何の役に立つかというと、ハタヨガの中心的な動きは、股関節の可動域と下肢と体幹の筋力を高めるのに効果的だから、10分余計に歩いたり、立っているのが億劫じゃない身体になるんです。
週1回60分ヨガ(別に2回やってくれても全然構いません)で育てた体は、移動のダラダラ歩きをウォーキングに自然に変えてくれるはずです。知らず知らず、体に良い習慣へと行動変容を促す土台をつくってくれるはずです。
最後に
やる気だけでは運動が続かないのは、人間の特性です。なら仕方ないとと諦めるか、それをハックして長期的な健康にアクセスしようとするかは、個人のチョイスです。
ヨガは自重・重力・マットの反力を使うことで、中強度運動と筋トレを兼ね、フォームを整えることで身体の使い方そのものを再学習するという点で、日常動作の質を高め、動きへの心理的なハードルを低くしてくれる機能があります。
もちろん、マトリックスの世界はまだ先というか、ならない方がいいので物理的に身体を動かさないといけないのは確かですし、アラインメントの意識などそれなりの努力も必要なのですが、きちんとやればやるほど日常動作のエクササイズ化、運動習慣の入口、姿勢改善などのハードルを低くしてくれるのがヨガだし、私は常に、そうなるようにクラスをデザインしています。
次回はヨガが具体的にどんな効果を見込めるかなどのお話をしていきます。



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