ダウンドッグはなぜ難しい?
気軽に「呼吸を感じながら少しお休みです」なんて言うインストラクターさんもいるけど、全然休憩にならないんだわ!!!
そう思ってらっしゃる方も多いかもしれません。
何のことかと言えば、Downward Facing Dog(下向きの犬のポーズ; アドムカシュヴァナーサナ)、通称ダウンドッグについて。
ほとんどのクラスで何度も行われるダウンドッグですが、これがなかなかビギナー泣かせのアサナ(ヨガポーズ)ですよね。もちろん、これを書いているわたしも同じでした。
身体で大きな三角を描くシルエットが美しいダウンドッグ。見た目はとってもシンプルですが、股関節は股関節は折り畳んでいるので前屈と見せながら、上半身は背中をやや反らせる後屈を行なっていて\意外と複雑/なのです。
この記事では、ちょっとのコツですぐにマスター! とはいかなくても「なんだかもっとダウンドッグと仲良くなれそう」と思えるいくつかのコツをお知らせします!
Contents
ダウンドッグあるある① 全体のシルエットがなんか四角い…
ダウンドッグあるある② 肩・手首が痛い
ダウンドッグあるある③首が詰まって息苦しい
息苦しいのは理由がある、だってそもそも逆転だから ダウンドッグあるある④ 手足がどんどん滑っていく! 最後に〜本当にリラックスしてダウンドッグを行える日まで
ダウンドッグあるある① 全体のシルエットがなんか四角い…
ダウンドッグへの入り方はいくつかありますが、初心者さんにお勧めしたいのはテーブルポーズから腰を持ち上げる方法です。テーブルポーズとは四つ這いの体勢のことですが、肩の真下に手首、腰の真下にヒザ、と丁寧にセットするのが重要です。
ダウンドッグを行うとき、手と足の距離が変わると発揮すべき筋力・柔軟性も変わってしまいます。適切な位置に置いていないと無駄に疲れてしまう上に、心地良さが半減してしまいます。
グループレッスンではつい、みんなのペースに合わせなければと考えてしまいがちですが、わからなくなったら1度テーブルポーズをセットし直して確認されることをお勧めします。初心者さんのうちはテーブルポーズのスタンスからつま先を立てて腰を持ち上げ、慣れてきたらヒザの位置をヒザ1個分後ろに下げてからダウンドッグに入ると良いでしょう。
そして腰がしっかりと持ち上がったら、重心は下半身に。
でもこれが初心者さんには本当に難しいんですよね。二等辺三角形のようなダウンドッグのシルエットですが、三角形にするには肩や脇、体の背面全体の柔軟性が必要です。全く日常でやらないポーズですから急にはできないのは当然。最初は台形になってしまう人がほとんどです。
ただ、台形のままだとダウンドッグほんっと~に辛いですよね。個人的な経験で言えば、初めてヨガをやって以降は週に1回程度クラスを受けて、大体3か月くらいかけて三角っぽくなりました。三角になれると少し楽になります。
この後は、ダウンドッグが台形から三角形になるまで、痛みのしのぎ方から根本原因へのアプローチまで、ずいっと紹介していきますね!
ダウンドッグあるある② 肩・手首が痛い
これは正に、台形になっていることで上半身側に体重が乗っているこがと原因です。
首・肩・脇の柔軟性が足りないことでダウンドッグが台形になると、どうやっても物理的に上半身に体重が乗ってしまうため、肩や手首に必要以上に体重が乗ってしまいます。前野項目でも書きましたが、大事なことなのでもう1回書きますね。
\重心は下半身に/
このことを意識するか・しないかだけでも実はかなり変わってきます。わたし達は見えている世界、要するに前方にばかり意識が向かいやすいのです。このポーズでは下半身に重心を置くのだと知らないと、つい手の方に体重がかかってしまうのが人の常。気合い入れてヘソから下を踏ん張って、お尻をさらに後ろ後方に突き出すイメージをしてみましょう。
イメージはできた…しかし足に力が入らないよ~という方は、膝を曲げてみます。脚が全体が強くなり、気持ちよく腰を持ち上げられるようになるはずです。
ダウンドッグあるある③ 首が詰まって息苦しい
肩が内側に巻いている人や、慢性的な肩こりがある人はこのお悩みに心当たりがあるのではないでしょうか。このお悩みの原因は、腕をあげるときに肩が一緒に上がってしまっているから。
そう言われてもピンとこないな、という方は鏡の前で立ってバンザイしてみて下さい。肩が耳のほうに持ち上がっていませんか? 2枚の写真を見比べてみるとわかるでしょうか。
左は耳と肩が離れていて、右は腕と一緒に肩が上がってしまっています。右はどうも窮屈そうですよね。本来はダウンドッグの時も左の肩のポジションでやりたいんです。では、なぜ右のように首と肩が近づいてしまうのか。
いくつかの理由があります。ひとつ目は、肩関節の柔軟性の問題です。
そもそも大人の肩関節は子供よりもずっと強くて、その分、硬い。腕がまっすぐ耳の横に持ってこれる人は実は少数派なのです。
でも自分でもそのことを知らない人がほとんど。そうと気づかず、腕を耳の横に持ってくるために脇のタイトな筋肉、それがくっついてる肋骨ごと持ち上げてしまっているのです。だから肩ごと持ち上がってしまうんですね。
ちょうど脇のすぐ下には、前鋸筋という肩甲骨を下げる作用がある筋肉があります。
プランクポーズで肩を安定させるときにも使われる筋肉ですが、この筋肉のストレッチや、その周辺の筋膜リリースをすると、肩関節の可動域は少し広がり、腕が持ち上がりやすくなります。
息苦しいのは理由がある、だってそもそも逆転だから
そして、苦しい理由その2はダウンドッグが逆転のポーズであること、そのものが理由です。重力で上半身が耳の方に落っこちてきてしまうので、腰をしっかり持ち上げる必要があります。
当たり前のことなのですが、こういうのを意外と忘れてるんですよね。これも「重心は下半身」と同じように、思い出すだけでも少しポーズが改善されるポイントです。もちろん、重心を後ろに持っていくほど、上半身は重力から開放されますので、こちらもしっかり抑えてくださいね。もちろん、ヒザをゆるめる軽減法を取ってもらってもOK!
また、普段は気にならない頭の重みも、逆転の状態ではクセものです。頭の重みに首が耐えきれず、頭を押し込みがち。
中級者以上でも、これだけが直らないな~という人も結構いるのですが、頭を押し込むと背中が丸まってしまい、呼吸が浅くなってしまいます。普段から背中が丸まりがちな方は、重力を利用して首を伸ばすイメージでやってみるのもいいかもしれません。
また、頭の重さに耐えるために顔を上げすぎてしまうパターンも。これはこれで苦しい〜。頭を下げすぎても上げてすぎても、呼吸しにくくなりますので、腰と肩を結んだラインの延長線に耳がくるくらいの位置に頭をセットする癖をつけましょう。
少し首の筋力が必要ですが太くなって困るようなことはありませんのでご安心を。このアサナを行いながら頭を支える筋力は普段の状態でも頭の位置を安定させることにも役立ちます。肩こりの軽減も期待できますよ。
逆転になると、普段は気づかない「ちょっとしたこと」が重なり合って、ダウンドッグを難しくしていることがわかります。こういった小さな気づきにアプローチすることは、ポーズを洗練させると共に、思い込みを捨てて自分を新しく捉え直す心のトレーニングにもなるのです。
「できない!」で思考停止に陥ることなく「やりたい!」と気持ちが先走りすることなく、少しずつ自分の身体の声を聞きながらアサナを深めていくのがベストだと個人的には思います。
ダウンドッグあるある④ 腰が伸びない・ハムストリングスが痛い
ヒザをゆるめるとダウンドッグが安定するのは、腿裏の筋肉であるハムストリングスを緩めることで、腰や背中、そこから繋がる脇の筋肉に余裕が出てくるから、肩の負担が減るからです。
だけどいつまでも「ヒザを伸ばした途端に腿の裏側がちぎれそうに痛いんですけど」状態は、いつか克服したいですよね。かかとが床に着くのはいつの日だ〜という人も多いでしょう。
そこで、最初にやりたいのは片足ずつヒザを曲げたり、伸ばしたりするワーク。
普段のレッスンでも序盤に入れるインストラクターが多いので、やったことがある人も多いはず。ポイントは肩を安定させること。
ヒザの曲げ伸ばしと一緒に上半身を前後すると、お尻が上下してしまい、せっかくなのにハムストリングスにストレッチが入らくなってしまいます。かかとを床につける必要はないので、腰は持ち上げたまま気持ちの良い範囲でヒザを曲げ伸ばししましょう。
次にやりたいのが両足を曲げ伸ばしするワークです
息を吸いながら、つま先立ちになって両ヒザをゆるめたら、腰を反るように背中を伸ばし、胸を開きます。息を吐きながら、その背中をなるべくキープし、ゆっくりと両ヒザを伸ばしていきます。
このワークは、体側に効果的なストレッチが入ります。さらにヒザの曲げ伸ばしとともに、ストレッチされている位置に変化が見られます。
ヒザを伸ばすと背中の伸びがキープできずに丸くなる瞬間がありますが「丸まってしまった」「できなかった」ということではなく、上半身と下半身に交互にストレッチが入る様子を楽しんでくださいね。呼吸に合わせて数回行うと良いでしょう。
また、ハムストリングのストレッチやリリースをする際には、お尻やふくらはぎなど、近位の筋肉もあわせてストレッチしてあげると相乗効果が期待できます。
ダウンドッグあるある⑤ 手足がどんどん滑っていく!
ダウンドッグがそこそこサマになってきた人も、手が前に滑る! という声はよく聞きます。
この対処法はレベル別でふたつ。超ビギナーさんには「手の下に手ぬぐいを入れるといいよ」とお答えします。特に新品のマットは滑りやすい。まずはケガしないことが1番。上記の首や肩などのつまり、手首の痛みなどがなくなるまでは、ツールをうまく利用しましょう。
ある程度できるようになってきたら、手汗のせいにするのは卒業して、股関節を折りたたむ力にフォーカスしましょう。股関節を折り畳むために使う筋肉は、腸腰筋、大腿直筋、縫工筋など。ここで安定させるためには、腹直筋、いわゆる腹筋の下の方も使います。
そんなこと言われても困っちゃう場合は、似てるポーズを探しましょう。例えば同じように屈曲位の股関節ポジションで行うナーヴァーサナ(舟のポーズ)は、ダウンドッグで腹筋を使うボディイメージが湧きにくい人にはおすすめの準備アサナでもあります。 下腹部と前ももを引き上げて、股関節の折りたたまれている部分をより高く引き上げるようにすると、ダウンドッグはより洗練を増していきます。ただし、折り畳むことばかり考えていると、なんとなく「ちっちゃい」ポーズになりがちです。背中側は広げて、あくまでも全体は大きな三角形を描くイメージは忘れずに!
本当にリラックスしてダウンドッグを行える日まで
続けていれば必ず、一応の形になり「ダウンドッグって気持ちいいな」と思えるようになるでしょう。そこから先も、意外と奥深いのがこのポーズ。本当にリラックスして行えるまで、慌てず、少しずつ身体の変化を楽しみながらアサナを磨いていきましょう。
アサナをかたちづくるのは柔軟性だけではなく、持ち上げるための力、つまり筋力も必要になることがわかりました。そしてさらに、自分の身体を内側から観察して、ポーズの全貌と重ね合わせていくイメージの力が組み合わさることで、アサナが身体に馴染んでいきます。それはどんなアサナでも同じことで、他のアサナすべてに適応できます。
あるアサナが心地よくできるようになった時、それはあるポーズをマスターしたというだけでなく、心のしなやかさをも増しているはずなのです。
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